ゆるり、ゆらゆら

"You are my light"

薮宏太さんに、夢を見る

 

 

「ジョセフ・アンド・アメージング・テクニカラー・ドリームコート」(通称:ジョセフ)のテーマの一つは、「再起」である。

「再起」という言葉を聞いて、何を思い浮かべるか。何と重ね合わせるか。それは人それぞれ。

主人公のジョセフは、エジプトで奴隷として売られ、更にいわれのない罪で投獄される。
絶望の中、ジョセフは牢獄で、「幸せだった日々」に思いを馳せる。

私はこのシーンで、コロナが流行する前と同じようにエンターテイメントを享受することができなくなった状況と重ね合わせてしまった。

 

 


「エンターテイメントは不要不急なのかどうか」。この議論はまだ記憶に新しい。
コンサートや舞台に行くことを楽しみに生きている私でも、エンターテイメントが無くたって、生命を維持することはできる。
ご飯3食食べて、お風呂入って、睡眠取って・・・普通の生活だって、できるかもしれない。
でも、エンタメのない私の世界はどこか空虚に感じるし、まるで周りの景色から色だけが無くなってしまったように見える。

 

この2年間、何公演ものコンサートや舞台が中止となった。
半券が切り取られていないチケットが、自宅でひっそりと眠っている。ジョセフもその一つである。
Hey! Say! JUMPのアリーナ公演も、私は結局1公演も入ることができなかった。
たとえ無事幕が上がっても、途中で中止になってしまうのではないか、と、ずっと不安が付きまとう。

 

私がこのコロナ禍において、しんどいな、と思っていたことの一つは、「もうコロナ禍以前のように、エンタメを楽しむことはできないかもしれない」と思ってしまうことだった。
諦めたくはなかったけれど、もはや、この先のことを願うこともしてはいけないような気がしていたのである。


それに加えて、これはコロナ関係ないのだが、私の応援していたジャニーズJr.「MADE」が、2020年1月に解散した。
私はMADEの作り出すコンサートが大好きでたまらなかった。願ってやまなかった初オリジナル曲が披露された2019年11月の単独公演は、間違いなく私史上最も思い入れのある公演だった。
しかし、MADEという枠組みがなくなった以上、もうこの公演を超えるようなエンタメに触れることは未来永劫ないのだと、絶望してしまった。

 

私は2020年以降、エンタメに夢を見れなくなっていた。

 

 

 


2年の時を経て、ジョセフという舞台はようやく幕が上がる。
そして、1公演も欠けることなく、幕が下りた。

 

2020年4月に中止が決定したのは、日生劇場に舞台のセットを作り上げた後だった、と聞いた。公演関係者の心中を思うと、胸が痛い。
それでも、私は今回どうしても、「コロナ禍となり3回目の春にこの舞台が上演される」という意味を考えてしまったし、そして、それが無事完走したことに強い意味を感じた。
この舞台の説得力は、完走したことにある、と思う。

 

ジョセフは運に見放され、絶望の淵に立つが、ひょんなことから再び立ち上がることになる。
様々なジャンルの曲とコミカルな雰囲気が合わさる中、物語はハッピーエンドへと向かっていく。
個性豊かなキャストの皆さんが作り出す世界は、「エンターテイメントって楽しい!」という大切な気持ちを思い出させてくれるものだった。

 

 

 

そして、改めて思う。薮くんは、なんてステージが似合う人なんだろう!
ここまで私の心の琴線に触れるようなパフォーマンスをする人は、いない気がする。
ステージの0番で、ロングコートを身にまとって立つ薮くんの存在感は、息をのむほどだった。
私は本当に本当に、ステージに立つ薮くんの姿が好きでたまらない、と再認識した。

個人的には、薮くんがアイドルだからこそ、このジョセフという役ができたのではないか、と思う。
ジョセフという役に薮くんの「アイドル性」が垣間見られる瞬間が、愛おしくてたまらなかった。

 

 

私の心は、大きく動いたらしい。今私に見える景色は、今までとは全く違う。
この先待っているかもしれない素敵なコンサートや舞台のことを、楽しみに思うことができるようになった。


当たり前だけれども、コロナ禍前の過去の日々に戻ることはできない。
相変わらず先の見えない状況は続いているし、気分の沈むニュースも多く、心が折れそうになることもある。

それでも、薮くんがいる限り。薮くんがアイドルでいてくれる限り。私の好きなエンターテイメントは、決して死んだりしない。

 

私にとって薮宏太さんは、夢、そして希望そのものである。